株式会社PREVENT(本社:愛知県名古屋市、代表取締役:萩原悠太、以下 PREVENT)は、社内研究組織Insight Labを中心に、高血圧・糖尿病・脂質異常症を有する従業員3,092名を対象に、6か月のモバイルヘルスを活用した疾病管理プログラム「Mystar」の高血圧コントロールに対する効果と、その効果の個人差(治療効果の異質性)を検証しました。標的試験エミュレーション(Target Trial Emulation)※1 の枠組みとアンサンブル機械学習を組み合わせた因果推論手法により、Mystar参加群では1年後の血圧管理不良者の割合が約5.2%低いことが示され、さらに、改善がみられやすい集団とみられにくい集団の特徴が明らかになりました。

本研究成果は国際学術誌PLOS Digital Healthに掲載されました。

参照リンク: https://doi.org/10.1371/journal.pdig.0001268

研究のポイント

研究の概要

本研究は、PREVENTが健康保険組合経由で提供する6か月のモバイルヘルスを活用した疾病管理プログラム「Mystar」の効果を、標的試験エミュレーションの枠組みで検証した観察研究です。2021年6月〜2023年12月の特定健康診査データおよびレセプトデータを用い、高血圧・糖尿病・脂質異常症のいずれかで治療中または冠動脈疾患・脳卒中の既往を有する従業員3,092名(Mystar参加群127名、通常治療群2,965名)を解析対象としました。

Mystarは、スマートフォンアプリを通じた体重・血圧・身体活動・食事などの生活習慣の記録と、医療専門職による隔週の電話相談(計12回)およびチャットサポートを組み合わせたオンライン完結型の生活習慣改善支援プログラムです。運動・食事・睡眠・飲酒・禁煙・ストレス管理について個別の行動目標を設定し、パーソナライズされた指導を実施しました。

主要評価項目は、1年後の健康診断における血圧管理不良(収縮期血圧≧140 mmHgまたは拡張期血圧≧90 mmHg)の有無としました。因果効果の推定には、G-formula(アウトカムを予測するモデルを標準化する手法)に複数の機械学習アルゴリズムを組み合わせる手法を統合し、平均治療効果(ATE)※4 および個別治療効果(ITE)※5 を算出しました。さらに、Ward.D2法によるクラスタリング分析でITEの異質性を評価し、効果修飾因子を特定しました。

研究の結果

Mystar参加群は、通常治療群と比較して、1年後の血圧管理不良者の割合が5.2%(95%信頼区間:4.4%〜6.0%)低い結果となりました。リスク比は0.81(95%信頼区間:0.78〜0.84)、NNTは19.2(95%信頼区間:16.7〜22.7)でした。

個別治療効果の分布には大きなばらつきがあり(中央値:−0.06、四分位範囲:0.25)、クラスタリング分析により2つのサブグループが同定されました。

効果修飾因子の重要度分析では、生活習慣改善への意欲、喫煙状況、拡張期血圧、飲酒頻度、肝機能指標(GOT・γ-GTP)、歩行習慣、運動習慣、年齢が上位に同定されました。特に、行動特性や代謝特性といった修正可能な因子が、年齢などの固定的な因子よりも効果の個人差を強く説明することが示されました。

社会的意義と実装可能性

本研究は、モバイルヘルスを活用した疾病管理プログラムが高血圧管理において1年間にわたり有意義な効果を持つことを、因果推論の枠組みを用いて示した点で重要です。加えて、治療効果の大きな個人差を定量的に明らかにしたことで、「誰にどのような介入を届けるべきか」という個別化戦略への道筋を示しました。

実装の観点からは、生活習慣改善への意欲が比較的高く、すでに一定の健康行動を有する人に対しては、Mystarのように生活習慣のセルフモニタリング、定期的な電話支援、個別フィードバックを組み合わせたサービスが特に活用されやすい可能性が示されました。これは、デジタルツールを一律に提供するのではなく、利用者の準備性や行動特性に応じて支援を届けることの重要性を示しています。一方で、同じサービスであっても十分な変化につながりにくい層が存在する可能性も示されており、より丁寧なフォローアップや支援強度の調整が必要になると考えられます。